【セットについて考えた ② 】

モリズム #7

SET Offense

 

 

◆アイスブレイク

先日、Netflixで「ブルーピリオド」(原作:山口つばさ、講談社)を観ました。不良優等生が、あることをきっかけに国内最難関の美大、東京藝術大学を目指すというストーリーなんですが、めちゃめちゃ面白いです(マンガ大賞2020受賞作っていうのは後で知りました…)。
自分の好きなモノに気付く瞬間。それを突き詰める上での色んな障壁。絵を描く/自分を見つめるとはどういうことか。受験の苦しさ(日々の研鑽、周囲との比較、伸び悩み、やってることが正しいのか、などなど)。とてもリアルで、自分の大学受験の頃を思い出しながら見入ってしまいました…
YOASOBIの「群青」は、この作品からインスパイアされた曲だということも後で知りました。それを分かった上で聞くと、また違った風景や感情と共に曲が自分の中に入ってきます。「渋谷の街に朝が降る」ってそういうことか!みたいになります(笑)
あんまり書くとネタバレになるのでこの辺にしますが、とにかくオススメです。アニメの続編、早く観たいです。

 

ちなみに、僕の好きな登場人物は佐伯先生と大葉先生、桑名さんです。

 

◆ここから本題

前編では、「マイボールになったら無理にSETに拘らず、もっと走って簡単に点獲ってもいいのでは?」ということを書きました。


後編の主題は
「SETの形を意識し過ぎて、得点チャンスを見逃していないか?」
です。

 

前回述べたように、SETにはチームとして決められた動きが存在します。大学バスケでは、いざSETとなると形をなぞることにフォーカスし過ぎて、途中で生まれているズレ/アドバンテージをフイにしているシーンをよく見ます。オフェンスの最終「目的」は点を獲ることであり、SETの遂行は「手段」の1つに過ぎない、と僕は考えています。

 

例えば以下の場面。AI Cutから、#2と#5のSide PnRを狙うSET(左図)。もし、X2が遅れていたら、わざわざ#5のBall Screenを待たずに、Driveしてしまえばより簡単にチャンスメイク出来そうです(右図)。

 


 

更にもう1つ。#1と#5のCross Screenの際、X1がその対応に夢中で(黄色のエリアがX1の視野だと思って下さい)、ボールを持った#3を全く見ていません。X3さえ抜いてしまえば、Helpがいない/遅れた(しかも小柄)Easy Layupに繋がりそうです。

 

 

点を獲る為に、あえて形を壊して道を外れる。
これだけなのですが、なかなか出来ない/やらないのです。
そこにはどのような背景があるのか。
以下に3つ、考えを纏めます。

 

<①選手の性格>

個人的な印象ですが、生真面目で素直な選手ほど、道を外れることが苦手です。上記のようなチャンスを逸しても、潜在的な得点機会を逃しているだけで、SETそのものは遂行しています。「チームの決め事から致命的に逸脱している」わけではないので、あえて型を破る必要性に気付きにくいのかもしれません。
この場合には、「チャンスの存在に気付いていたか」等を直接フィードバックすることが有効かと思います。一瞬一瞬の感覚的な判断なので、時間をかけて根気強く選手とコミュニケーションを取ることが大切だと考えています。
ズル賢い選手ほど、「どうしてあそこ無視して自分でDriveしたの?」と聞くと「だって空いてたし。」「ディフェンスが俺のこと全然見てなかったから、これ行けるわって思った。実際行けた(笑)」などと返ってきます。
ブルーピリオドの大葉先生も「マジメさに価値があるのは義務教育までよ」(シーズン1-7:『1次試験開始』より)って言ってましたね。

 

<②ロールプレイヤー、“つなぎ”の選手>

あなたがコーチから、つなぎ役としてSETの着実な遂行(パスの中継とか?)を求められていたら(それでしかプレイタイムを貰えない立場だとしましょう)、無難に役割を全うしようとしますね。あえてリスクを冒すようなプレイをするのはちょっと躊躇われます。勇気を出して(色気を出して?)Driveして、もしミスでもしたら……
このように、チーム内での立ち位置的に「チャンスへの積極的なチャレンジがしにくい」といったことも背景の1つとして考えられます。

 

<③エース、Go to Guy>

今度は逆に、あなたはチームのGo to Guy、エースです。PGが、あなたの得意なアクション(ここでは仮に左手でのDownhillとしましょう)が演出されるSETをコールしました。予定通りパスを受けいざDrive、と思ったら、ディフェンスが警戒して小さく小さく守っている。ここで味方にパスするのも1つの賢いアイデアです。それでも、多少強引だけど自分のところで攻め切る、押し通す、こじ開ける、ねじ込む。
この場合は、「型を破れない」のではなくて「(状況を把握した上で)型を破らない方を選んでいる」といった方が適切でしょうか。エースとしてのプライドを持って、あくまで自信のある左Driveで勝負しに行く。

 

②と③は、そのチームやコーチの考え方に関わる部分なので、正直難しい問題だと思います。

 

②について、僕たちのチームは「アドバンテージ見つけたら、SETは無視していい。SETなんてただのツールだから、型破りしていいし、他の4人はいつでもそれに合わせられるように」とシーズン当初に説明をしておいて、GOサインは出しておきます。「ちょっとでも油断すれば、誰でもどこからでも攻めてくる」という心理的プレッシャーを与えることは、ディフェンスにとって大きなストレスだと捉えています。

 

③については、特に意見が割れる話題だと思います。個人的には、「この選手で負けたら仕方ない。心中する」という選手なら(勿論カテゴリーや試合状況で対応は変わりますが)、「寄られたらパス、とか余計なことは考えずに粉砕して来い!」と考えてしまいます。当初の主張と真逆のことを言ってますが、それほど「スペシャルな」選手であればそれでも良いかな、と思います。

 

◆最後に

今回書きたかったのは、「SETの形に縛られ過ぎず、隙があるならどんどん突いていこう(個人的には、エースが絡む場合はその限りではない)」ということでした。
ここの線引きはとても難しくも面白い部分だと思っています。コーチの哲学や試合状況で、いくらでも正解が生まれそうです。

 

とりあえず現時点では「ルールの範囲内で利用できるものは全て利用して、全力で勝ちに行くのが大前提。そして(変な表現だけど)もし負けるなら、チームとしての納得解を尽くして結果として負ける」が、根本のゲームに臨むスタンスとして、自分に最もしっくり来ます。

 

SETの考察を出発点に、最終的にはゲームに臨むスタンスまで話が来てしまいましたが、根幹抜きに枝葉を語ることは出来ないので、言及してみました。

 

今回はここまで。
それでは、また次回!

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